2023年9月16日(土)、八丈サイエンスクラブの様子

八丈サイエンスクラブ

論文の読み直し

今日は、先週の予定通り、論文の読み直しです。論文を書き上げたのに、

なんで読み直し?

と思う方もいらっしゃるでしょう。実は、全力で論文を書き、もう直すところがないと思っていても、時間が経つとぽろぽろとおかしなところが出てくるものなのです。

そんなわけで、今回の八丈サイエンスクラブ内の時間で、論文を一通り読み直しました。

初めは図と図の説明の確認。私たちのプリンターは白黒です。色を使っていた箇所が見つかりましたので、白黒に描き直しました。

これまで、論文は、「図」、「図の説明」、「材料と方法」、「結果」、「考察」、「参考文献」、そして、最後に「緒言」を書きました。これは、論文を書くときの順番です。

論文を読み直すときは、「図」、「図の説明」、「緒言」、「材料と方法」、「結果」、「考察」、「参考文献」の順番です。一行一行声を出して読み上げます。

日本語として分かりやすい?

う〜ん

どう書き直す?

と質問をしながら、おかしな一行を書き直します。

図と図の説明は?

OK

緒言は?

OK

・・・

という感じで修正が進みます。

先週、八丈サイエンスクラブに参加されているお子さんは、一生懸命に「緒言」を書きました。そのときは私もベストだと思っていました。

しかし、一週間経ちますと、意外と日本語の表現がおかしい文が見つかったり、単位がおかしな文が見つかってきます。そのたびに、私たちはどんどん直していきました。


論文執筆の最後

開始1時間後、参加されているお子さんの集中力は切れ始めました。でも、今日は最後です。何度も引っ張って論文執筆をやりとげました。

これで終わり!

終わった〜!

二人でハイタッチしました。1年2ヶ月、苦しくて楽しい期間でした。私も彼からたくさんのことを学びました。


論文を書く背景の大切さ

プロの研究者が論文を書くとき、実は、上記の方法とまったく同じことをしています。全力で草稿を書き、少し時間を置いてから、また全力で直します。

研究者が論文を投稿するときは、今はネット経由です。何度も直し、何度も心を落ち着かせて、最後に投稿のボタンを押します。

私の場合は、最後のボタンを押すとき、だいたい指が震えます。この一押しが、今までの実験、論文執筆、精神的な苦しさの積み重ねの集合体で、すべてを背負っているからです。

これまでのことを全て思い出しましたら、気楽にボタンを押すことはできません

将棋の羽生善治先生が、勝負を決する一手を指すとき、指が震えるのは有名な話です。私は羽生先生ほど優れてはいませんが、論文を通すときと同じような気持ちだからではないかと思っています。

論文を書き切る背景の大切さは、私はプロの研究者になってから理解しました。理解するのはどうしても時間と経験が必要です。

八丈サイエンスクラブに参加されているお子さんは、すべては理解できなかったでしょう。でも、ポイントポイントの大切さは今回の経験で刷り込まれたはずです。

あと6ヶ月で彼は、小学校を卒業し、中学生になります。今はすべて理解できなくても、中学生、高校生、大学生になって、自分がやった研究を見直して見てほしいと思います。

研究もさることながら、その背景に潜む学びがきっと浮き上がって見えるはずです。


コンテストは水物

確かに、コンテストの賞は貰えれば嬉しいでしょう。でも、投稿されている他の方々も一生懸命やっています。正直、誰が賞をとるのかは分かりません。

今回、風の研究は、八丈サイエンスクラブに参加されている小学生のお子さんが行いました。私もこの目で見ています。

ところが、最終的に、論文は小学生がやったとは思えないようなものになってしまいました。

大人がやったんでしょ?

第三者が見るので、そう思われても仕方がないかもしれません。コンテストの審査も、審査員だけでなく、コンテストのスポンサーなど、色々な要因によって左右されます。


研究は賞をとるためにやっているわけではありません。ここは勘違いしない方がいいです。

繰り返しになりますが、「賞」にこだわるのではなく、これまでの研究から「自身の人生にとって何を学んだか」が最も大切です。

当分、八丈サイエンスクラブは締切がありません。リラックスして、次の研究テーマを探したいと思います。

今までよくがんばりましたね

おつかれさまでした

しばらく、八丈サイエンスクラブはゆっくりと研究します


次回の八丈サイエンスクラブは、2023年9月30日(土)13:30-15:30です。


八丈サイエンスクラブは、八丈島の自然から不思議を抽出し、探究・研究をします。興味のある方は、ぜひ、ご参加ください。見学も大歓迎です。

タイトルとURLをコピーしました